死因贈与契約の落とし穴【相続手続きの相談窓口】
一生身の回りの世話をして生活費をくれるなら、自宅土地建物をやるという死因贈与契約の落とし穴。

【事例】
長男である私は、母に「私と同居して身の回りの世話をして、また生活費として終身10万円くれるのであれば、自宅の土地建物をあなたに贈与する」と言われ、長年母と同居して身の回りの世話をして生活費も渡してきた。ただ、最近母との人間関係が悪化し、母親が「自宅の土地建物は妹にやる。お前にはやらない。」と言い出している。こんなことが認められるのでしょうか?
【よくある誤認例】
生活費を渡すという負担の履行をしているので、もはや死因贈与契約を取り消すことはできない。
【実際のところは】
負担が履行された場合には、原則として取り消しできないが、特段の事情があれば取り消すことができる。
例えば、長男の扶養・介護に著しい問題があった(虐待等)、あるいは支払っていた毎月の生活費の総合計と受贈予定の不動産価値に著しい不均衡があれば、死因贈与契約の取り消しが認められる場合もある。
【解説】
本事例は、法律的に言えば、負担付死因贈与契約については、そもそも取り消しが認められるのかという問題です。
この点は負担の履行がされれば、もはや取り消しできないという立場や、負担の履行の有無を問わず取り消しできるという争いがありましたが、最高裁は負担の履行がなされた場合には、原則として取り消しできないが、特段の事情があれば取り消しできるというや立場を取っています。(最判昭57・4・30判タ470・116)
最高裁は「負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与契約に基づいて受贈者が約旨に従い負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合においては、贈与者の最終意思を尊重する余り受贈者の利益を犠牲にすることは相当でないから、右贈与契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、右契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らして右負担の履行状況にもかかわらず負担付死因贈与契約の全部または一部の取り消しをすることがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、遺言の取り消しに関する民法1022条、1023条の各規定を準用するのは相当でないと解するべきである」と述べています。
結局は「やむを得ないと認められる特段の事情」の有無によって結論が決まるわけですが、その規範の具体的当てはめについては、東京地裁平成5年5月7日判決(判タ859・233)などが参考となります。
本事例についても、負担の内容が母親にとっても利益があると考えられます。また、最近になるまで母親は長男を信頼して長男もまじめに扶養・介護していた実績がありますので、よほどの事情がない限り死因贈与契約の取り消しはできないと考えます。

【事例】
長男である私は、母に「私と同居して身の回りの世話をして、また生活費として終身10万円くれるのであれば、自宅の土地建物をあなたに贈与する」と言われ、長年母と同居して身の回りの世話をして生活費も渡してきた。ただ、最近母との人間関係が悪化し、母親が「自宅の土地建物は妹にやる。お前にはやらない。」と言い出している。こんなことが認められるのでしょうか?
【よくある誤認例】
生活費を渡すという負担の履行をしているので、もはや死因贈与契約を取り消すことはできない。
【実際のところは】
負担が履行された場合には、原則として取り消しできないが、特段の事情があれば取り消すことができる。
例えば、長男の扶養・介護に著しい問題があった(虐待等)、あるいは支払っていた毎月の生活費の総合計と受贈予定の不動産価値に著しい不均衡があれば、死因贈与契約の取り消しが認められる場合もある。
【解説】
本事例は、法律的に言えば、負担付死因贈与契約については、そもそも取り消しが認められるのかという問題です。
この点は負担の履行がされれば、もはや取り消しできないという立場や、負担の履行の有無を問わず取り消しできるという争いがありましたが、最高裁は負担の履行がなされた場合には、原則として取り消しできないが、特段の事情があれば取り消しできるというや立場を取っています。(最判昭57・4・30判タ470・116)
最高裁は「負担の履行期が贈与者の生前と定められた負担付死因贈与契約に基づいて受贈者が約旨に従い負担の全部又はそれに類する程度の履行をした場合においては、贈与者の最終意思を尊重する余り受贈者の利益を犠牲にすることは相当でないから、右贈与契約締結の動機、負担の価値と贈与財産の価値との相関関係、右契約上の利害関係者間の身分関係その他の生活関係等に照らして右負担の履行状況にもかかわらず負担付死因贈与契約の全部または一部の取り消しをすることがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、遺言の取り消しに関する民法1022条、1023条の各規定を準用するのは相当でないと解するべきである」と述べています。
結局は「やむを得ないと認められる特段の事情」の有無によって結論が決まるわけですが、その規範の具体的当てはめについては、東京地裁平成5年5月7日判決(判タ859・233)などが参考となります。
本事例についても、負担の内容が母親にとっても利益があると考えられます。また、最近になるまで母親は長男を信頼して長男もまじめに扶養・介護していた実績がありますので、よほどの事情がない限り死因贈与契約の取り消しはできないと考えます。