遺言書に記載すれば相続人の廃除が必ず認められるのでしょうか。【相続手続きの相談窓口】

被相続人Xは、生前、その法定相続人Yにつき、いろいろ苦労かけられたとして、秘かに相続人から排除したいと考え、遺言書にその旨を記載した。これにより当然にBは相続人から排除されるのでしょうか。
よくある誤認

なお、遺言書に遺言執行者の記載がなければ、まず家庭裁判所に民法1010条に定める遺言執行者選任の申立てを行い、これにより選任された遺言執行者により相続人廃除の申立てを行う必要があります。
実際は

解説
推定相続人の廃除とは、
①被相続人に対する虐待
②被相続人に対する重大な侮辱
③推定相続人の著しい非行
のいずれかに該当する場合に、被相続人の意思により推定相続人の相続権を剥奪するという制度であり、その意思表示は遺言書で行うこともできるとされています。
しかしながら、廃除が相続権の剥奪という重大は効果を生じるものである以上、いずれの廃除事由にせよ、被相続人の主観的な判断では足りず、客観的に被相続人との間の相続的協同関係を破壊する可能性を含む程度のものである必要があるとされています。
例えば、一時的な感情にかられての行為や、廃除事由の作出につき被相続人側にも責任の一端があると認められるような場合には、裁判実務上は廃除事由を否定する傾向にあると言えます。
特に遺言によって廃除の意思表示が行われた場合には、被相続人が生前に廃除の意思表示をする場合と異なり、廃除の意思表示が判明した時には被相続人は死亡しているため、廃除事由に該当する具体的事実を明らかにできない事態が想定されます。
遺言内容を実現すべき遺言執行者としては、廃除の意思表示が遺言に記されている以上、その内容を実現すべく、まず、家庭裁判所に相続人廃除の申立てをした上で、可能な範囲で廃除事由に該当する具体的な事実の有無を調査し、その存在を家庭裁判所に立証していくことが求められますが、現実にはその立証にはかなり困難を伴うものと思われます。
特に遺言執行者の記載がなければ、まず家庭裁判所に民法1010条に定める遺言執行者選任の申立てを行い、これにより選任された遺言執行者が相続人廃除の申立てを行うことになりますので、より廃除事由の立証が困難になると思われます。
【まとめ】
遺言によって相続人の廃除したい場合には、まず遺言書でその旨明記し曖昧な文言は使用しないことです。
曖昧な文言とは、「相続させない」とか「一切相続させない」というような、相続人廃除の意思表示なのか、単に相続分を0とするという意思表示なのか、遺言執行者が相続判所の意思表示であると判断しにくい文言のことです。
遺言書作成の際には、遺言執行者に無駄な時間と労力をかけさせないためにも、意味内容が一義的に明確となる文言を使用すべきです。
「相続人から廃除する」と。
その上で、廃除したい推定相続人につき、具体的にどのような廃除事由が存在するかを明確にし、これを根拠付ける資料を添えて、遺言執行者にしっかり託しておくようにしましょう。