相続不動産の財産評価

土地は他の財産にはない特徴をいくつか抱えています。
その中でも最大の特徴は「一物五価」と言われているものです。
【土地の時価の評価は一物五価】
①公示価格
⇒公示地価(国土交通省、3月下旬公表)→1月1日現在
②基準価格
⇒基準地価(都道府県、9月下旬発表)→7月1日現在
③市場価格
⇒取引地価(当事者間の取引価格)
④固定資産税評価額
⇒固定資産税基準価額(市町村、3年に1回)→1月1日現在
⑤路線価額
⇒相続税評価額(国税庁、7月1日公表)→1月1日現在
【公示価格と基準価格】
①の公示価格は、1970年度から国土交通省が毎年3月下旬に公表している公示地価と呼ばれるものです。
この価格は1月1日現在の地価を示しています。
全国で2~3万地点を調査して公表していますが、調査の対象ポイントは毎年減少気味になっているようです。
②の基準価格とは、各都道府県が毎年9月ころに公表しています。
その年の7月1日現在の地価として公表しており、全国でやはり2万地点ほど調査しています。
公示価格と基準価格は一般の土地取引価格の指標と言われており、そのため、公的な地価とも呼ばれております。
【主観の多い土地取引価格】
③の市場価格とは、第三者間で行われる通常の取引価格のことです。
土地の取引は相対取引となることが多いため、売り手と買い手の事情により価格が変動する可能性があります。
したがって、第三者間の取引であっても客観的価値による価格とならない(主観性が高い)ケースも生じるのです。
市場価格を算出するための基盤には、主として取引事例比較法と収益還元法の2つがあります。
前者は、近隣事例比較法とも言われ、最近における近隣での類似条件での取引価格を参考にして決定していきます。
宅地建物取引業者(不動産会社)は不動産流通機構(REINZ)でその地域の直近の成約事例を見ることができ、販売されていた時の図面も確認できるため、特殊な条件下での取引であったか否かも確認でき、売却の査定を依頼されたときには近隣事例比較法で査定書を作成するところがほとんどです。
後者の収益還元法は、不動産運用の適正な利回り率から逆算していく方法のことです。
都心部では鑑定評価としても主役の座を占めだしています。
④の固定資産税評価額は、市区町村が3年に1回の割合で、その年の1月1日現在の評価額を決定しています。おおよその目安は、毎年公表される国土交通省の公示価格の70%程度になります。
固定資産税評価額は固定資産税や都市計画税の算出根拠となるだけではなく、倍率方式が適用される土地においては相続税の算出根拠にもなります。
さらに、建物については固定資産税の基準価格というだけではなく、相続税評価額のベースにもなりますので、この検証は重要なポイントです。
【なぜ路線価格が必要なのか】
⑤の路線価格とは、国税庁が毎年7月1日に公表している価格です。
路線価格は通常、公示価格の80%程度とされています。固定資産税評価額はだいたい公示価格の70%程度と言われていますので、路線価格の方が若干高く設定されているようです。
公示価格が時価に類似しているのなら、なぜ、路線価格は時価より低く設定されているのでしょうか。ここに金融資産である現預金との違いが見て取れます。
現金1億円はまさに時価1億円です。ところが、1億円の土地を現金にするには、売却コストや売却による税負担などが発生します。そうすると、同じ1億円でも現金そのものと土地には若干差が生じてきます。そのため、路線価格は実質的な金銭価値に修正しておくことで土地と現預金の違いを調整しているというわけです。
【民法と税法の時価の違い】
ところで、冒頭で土地が一物五価もあることを解説したことには大きな理由があります。
この一物五価を理解することで民法と相続税法との財産評価上の違いが明確になるからです。
たとえば、相続財産を分割する場合の分割のベースになる財産の金額は一物五価のどの価格になるでしょうか?
当然のことながら、相続人らは時価で按分することを求めてくるはずです。
ここで言う時価とは、相続開始時における「客観的な金銭(現金化できる価格)の評価額」のことです。したがって、現預金などは一物一価のため、民法上も税法上も基本的に同じです。ところが、土地や建物などの不動産は少し異なってきます。
相続税法では、財産の評価は「時価」で評価しなさいと規定しています。この場合の時価は、売り急ぎなどの特殊な状況の中で成立した価格ではありません。
その金額ならいつでも正常な状態で交換できる客観的な交換価格を示す価格だと言っているのです。
さらに、財産評価基本通達ではその時価を路線価格として公表(おおよそ公示価格の80%)しています。簡単に言えば、本来の時価より安めに設定した金額を時価としても良いと言っているわけです。したがって、財産分割を行う場合の時価(民法上の時価)とは異なってくるのです。
【均等に分けたのに相続税の負担が違う】
前記のように、土地などの不動産の評価額は、一般的に「財産分割や遺留分の侵害額請求の対象となる価格」と「相続税の計算の対象となる価格」では異なってきます。
これは、相続税法が時価を財産評価基本通達で定める路線価格などを利用してもよいと言っているからです。
そのうえ相続税法では、小規模宅地等の評価減など、税法特有の評価減制度が存在しています。
ここで以下の事例を見てみましょう。
Aさんが遺された遺産は不動産が5億円、債務が1億円です。
Xさんは、そのうち時価3億円の不動産とその不動産に担保として入っている銀行借入金の1億円を相続することになりました。
一方のYさんは、時価2億円の居住用不動産を相続することになりました。
それぞれの実質的な相続財産が均等に2億円ずつとなったため、スムーズな相続となりました。(ここでは銀行借り入れは「免責的債務引受契約」をしたと仮定)
ところが、相続税の計算ベースとなると相続税評価額については、Xさんの場合は路線価格が低かったうえ、賃貸用不動産のための小規模宅地の評価減や貸家や貸家建付地の評価減の適用を受けました。3億円の時価評価額が1.8億円にまで減少したのです。そのうえ、金融機関から1億円の債務も相続していますので、税法上の相続税評価額は8,000万円にまで減少しました。
一方のYさんは、居住用不動産を相続しましたが同居していたわけではありません。さらに、この居住用不動産を他人に賃貸する予定です。そのため、相続税法上の評価減は一切受けられません。
土地は路線価格の、家屋は固定資産税評価額だけの評価減にとどまりました。したがって、この相続税評価額は1.6億円となったのです。
Xさんの相続物件 | Yさんの相続物件 | |
民法上の分割財産 としての評価額 |
賃貸用不動産 時価 3億円 借入金 ▲1億円 相続財産 2億円 |
居住用不動産 時価 2億円 相続財産 2億円 |
⇩ | ⇩ | ⇩ |
税法上の評価額 | 相続税評価額 1.8億円 ▲債務相続 1.0億円 相続税評価額 0.8億円 |
相続税評価額 1.6億円 相続税評価額 1.6億円 |
民法上の財産分割を検討する場合には、互いに2億ずつということで納得されていたのですが、相続税の納税計算の場合に必要な相続税評価額に修正すると、0.8億円対1.6億円、つまり1対2になってしまったのです。
生前対策などで相続不動産の財産評価をする場合には、民法上の分割財産としての評価額(実勢価格)と税法上の評価額を出しておく必要があるのです。
相続不動産の流通価格(実勢価格・民法上の時価)査定
Blog
Mobile QR Code

相続対策、相続した不動産、事故物件、空き家、農地、生産緑地、借地、底地、離婚共有不動産などなど、不動産のお困りごとはお気軽にご相談ください。
横浜市の不動産売却|Rworks株式会社 (rworks-baikyaku.com)
理想の施設が見つかる有料老人ホーム検索サイト
